時は1971年、漫画『ルパン三世』から生まれたTV第1シリーズにおける変化の経緯をふんわりまとめてみました。このアニメシリーズって、断続的だけど放送期間では『サザエさん』の次に長いって知ってました?
モンキー・パンチ「ルパンは義賊ではない」
原作漫画(1967年-)はアメコミの雰囲気
ルパン三世 原作第46話「ウハニ」1/2 - YouTube
n5791
2012/03/17 に公開
この動画シリーズ、漫画にセンスよく音付けてます。最初の音楽レトロおしゃれでかっこいいのですが、やや長いので、お話へと急ぐなら1:15から見てね。
モンキー・パンチ先生、絵がうまい(当たり前ですけど)。大胆なバランスで迫力を出すところとが。この一見奔放で雑に見えながら計算されたタッチ、今見るとまた新鮮。アメコミ風(モート・ドラッカーの影響)、とありますが、そこは日本のMangaなので、コマ割りやアングル、とくに間(時間的/空間的/心理的)の空け方において、ある意味アメコミを凌駕したところがあります。
さて、主人公ルパンの設定なのですが以外事実を目にしました。
モンキー・パンチはあくまでルパン三世を「悪漢の大泥棒」として描きあげたが、原作よりも人気の高いアニメや映画などでは「心優しい大泥棒」ルパンという設定で、原作とは大きく性格が異なる部分がある。モンキー・パンチもルパンの中に優しい面があることは公言していたが、あくまでもルパンは悪事を働く泥棒であり「ルパンは(アニメで描かれるような)義賊ではない」といった旨の主張を続けていた。アニメではモンキー・パンチ本人が初めて監督を務めたとき、「敵を後ろから刺す」というシーンでディレクターに「ルパンはそんなキャラではない」と言われ、原作者であるにも関わらず却下されてしまった。
原作者でも却下って、ちょっと可愛そう。でも「義賊」って言っちゃった途端固定化されちゃうからね。その意図は分かる。ただ後ろから指すのは人間的にどーかとも思うから、却下されてもしょうがないのかな?
ルパンは弱者から盗まないとか、銭形幸一警部に組織人の悲哀を感じるとか、いろいろ読み解いてもらっているようだけど、ポリシーというような大それたものは持っていないし、教訓的なことを織り込もうなんて思っていない。読んでいる間は、他のことを忘れていかに楽しんでもらえるかだけ考えた[15]。
モンキー・パンチ
とにかく、モンキー・パンチ本人は、お説教的なことが嫌いなんだね。分かる気がする。本人はただ面白くしたかっただけっていう。
そういう意味で、後に映画『カリオストロの城』(1979年)を作った宮崎駿も、彼が担当した頃のTV第1シリーズは「(そもそも期待されていないので)なにやってもいい状態で、どうなるかわからない番組なとこが良かった」と書いていたのを思い出します。各キャラの両義性と70年代の反体制的な雰囲気がスリリングな、一種”実験アート”企画だったのだと見られます。
なあんて、このあたりはさらに調べると、原作者を含め制作に携わった人たちのそれぞれの考えがあって複雑なようです。1971年TV第1シリーズだけとっても下記のとおりの大きな変化がありました。(以下、ルパン三世 - Wikipediaを参照してまとめました)
ルパンのTV第1シリーズのキャラ変化
最初にアニメのパイロット版を作って原作者の了承を得、制作に乗り出したのは大隅正秋氏でしたが、そのあと宮崎駿&高畑勲両氏に引き継がれました。
① 最初の担当者大隅正秋(クレジットは1-6、9、12話)
ルパンのイメージ=富裕の倦怠を紛らわすために泥棒をする退廃したフランス貴族の末裔(アンニュイ、しらけ世代)
愛車=黄色いベンツSSK (運転しているルパン役がピエール瀧っぽくて微妙。これ絵に描くのが手間なんで後に宮崎駿が却下したらしい。たしかにね。)
ターゲット=大人(中学生以下は非対象)
視聴率3%という歴代ワーストの数字に (未だに破られない記録とは、かえってアッパレ)
中学生以下は眼中にないルパン(大隅正秋)
【公式】ルパン三世 1st series 第1話「ルパンは燃えているか…?!」”LUPIN THE 3RD" PART1 EP01(1971) - YouTube
TMSアニメ55周年公式チャンネル
2019/04/24 に公開
今はむしろ成人向けアニメ真っ盛りなことを考えると、時代の先を行き過ぎたということでしょう。
②引き継いだ宮崎駿&高畑勲(本格参加は13話からだが制作過程は、大隅氏と混ざっているが実情)
ルパンのイメージ=常にスカンピンで何かオモシロイことはないかと目をギョロつかせているイタリア系の貧乏人
愛車=フィアット500(この動画はエンジンをホンダZCで改造したもの。カーブでバンクするところがアニメっぽい)
ターゲット=子供路線に修正
視聴率9%と改善される (その後再放送で20%まで伸びる)
子供が見ても良いルパン(宮崎&高畑)
【公式】ルパン三世 PART1 第14話「エメラルドの秘密」”LUPIN THE 3RD PART1” EP14(1971) - YouTube
TMSアニメ55周年公式チャンネル
2019/05/29 に公開
ふんわりボブにエプロン姿の不二子(一応、変装ではある)を始めキャラが完全に宮崎駿タッチになっていた…。
どちらが好きかを決めるのはあなた次第です。というかその後もシリーズのたびに変わりつづける作画だから、そのあたりは気にしてはいけない。逆に、そういう各時代との添い寝感があるからこそ、シリーズが延々続いているのだと言えます。え、小栗旬について? 特にございません。ただ、一言だけ言わせていただけるとしたら、「『変態仮面』の鈴木亮平は偉大である」、以上です。
結論
あのぅ、実はこれ、音楽の前フリだったんですが、面白がっているうちに長くなっちまったもんで、ほんじゃまた〜!
(朗報!) 『カリオストロの城』など、ルパン三世の映画はこちらで無料視聴可能です。
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